2026.02.28
講演記録③:伊藤武志氏「共感経済における企業の取り組みの重要性」
2026年1月22日に開催された「SDGsとその先を見据えた理念経営・共感経済セミナー」シリーズ、第2回「未来の企業価値を決定づける『言語化』と『共感』の実行力」から、伊藤武志氏(大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI))の講演内容を全文記録したものです。
2026年1月22日に開催された「SDGsとその先を見据えた理念経営・共感経済セミナー」シリーズ、第2回「未来の企業価値を決定づける『言語化』と『共感』の実行力」(共同開催:一般社団法人日本SDGs 協会/いのち会議/大阪大学SSI車座の会)のなかから、伊藤武志氏の講演内容を全文記録したものです。
セミナーの開催記録については、以下の活動報告をご覧ください。
2026年1月22日:2025年度第3回公開セミナー 開催記録
なお、同セミナーでは、以下の2つの講演も行われました。ご参照ください。
講演記録①:宮田博文氏「社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。」
講演記録②:堂目卓生氏「共助社会と共感経済――『いのち会議』の理念と活動」
「共感経済における企業の取り組みの重要性」
大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)
伊藤 武志 氏
本日は10分のお時間ですので、これまでの流れや、私にとっての重要な「出会い」について簡単にお話しさせていただきます。

私は2009年、日本アスペン研究所で堂目先生にお会いしまして、共感経済について知りました。そこから10年経ち、堂目先生が今のSSIという組織を作るということで、大学に招いていただいたわけです。 その直後、2020年の1月に宮田会長が先ほどおっしゃっていた「未来会議」に参加をさせていただきました。50人ほどが内部の方、50人ほどが社外の方でした。日曜日の午前中に経営会議をして、午後に身体を使うワークをさせていただいて、その夜に飲み会にも参加させていただき、本当にありがたいご縁をいただきました。そのとき、直後の2020年3月に対談がセッティングされていたのですが、コロナ禍で、結局対談のお話がなくなっていたんです。それが、今日実現し、大変ありがたく思っております。
「良い経営」の難しさ
私自身は経営学・管理会計が専門で、経営を良くすることについての教員です。研究者でもあって、銀行でコンサルタントもやっていました。つまり、いい経営とはどういうものであるかっていうことを学んだり探究してたりして、30年くらい経ってるわけです。
では、いい経営、いま風に言えば「推しの会社」をどうやって見つけるかということですが、それがものすごく難しいと思っています。
この図にあるようなことを実現するために、非常に大きな役割を持っているのは、やはり企業です。GDPの大半を作っている企業というものが、社会を作る側を支えていますので、そういう企業さんたちが切磋琢磨しながら良い経営をしていけば、世の中がさらに良くなることは間違いありません。

しかしながらここで問題があります。例えば、研究者がSonyさんを対象とした調査ができたとします。それを経営学として発表すると、「そんなに良い会社の調査ができて素晴らしいね」という評価を受けます。ここでは、会社がすごそうだと研究者が高い評価を受けることになってしまっていて、非常に不健康です。本来は、会社の良さや研究の良さは、会社の大きさには関係がないはずですが、世間の評価はそうはなっていないことが多いわけですね。
もちろん、優秀な会社が上場して大きくなっていることは確かです。必ずしも間違いではないんですけれども、本来、会社は名前だけで評価できないところもあります。私は、上場していない会社さんにもたくさんお目にかかって、良い会社がたくさんあることを知っています。そういう会社さんにもたくさんの従業員さんがいらっしゃいますから、そういう会社さんこそ、応援することがすごく大切なはずです。しかし、コンサルタントもお金があるところにいくし、企業研究者も大きい会社ばっかりにいっていて、偏った状況にあるんですね。
そんな問題意識を持って、大学に来たばかりの時に、宮田さんの会社の取り組みを知ることができました。どういう会社で、どこが素晴らしいのかについては、先ほどお話ししていただいた通りです。なかでも素晴らしいことの一つが、「みらい会議」ですね。「みらい会議」は、完全にオープンです。企業経営にはもともと、オープンブックマネジメントという、会社の中で情報をすべて共有するという方法があります。でも、それはあくまで会社内での共有が普通です。しかし宮田運輸さんでは、社外にも情報が共有されています。これを実体験させていただいて、私は「これは推すしかないよね」と思わせていただきました。実は、今回の講演を宮田さんにお願いしようと最初に提案されたのは、私でも堂目先生でもなく、吉條先生だったんです。偶然ということでもあるんですけれども、やっぱりご縁というものは収まるところに収まるのかなと感じています。

みんなでみんなを支える経済
どんな仕事も、必要だからそこにあります。ですから、必要なことをちゃんとやっていくということは、ものすごく大事なことです。「職業に貴賎はない」という言葉がありますが、仕事をしている方々は、みんなが一様に、それぞれを支えているだけです。そこに差はありません。
しかし、世の中を支えるにあたって、どうしてもお金が必要になります。でもそれは、こっちで手伝ってもらった代わりにお金を差し出して、またこっちで手伝ってあげた代わりにお金をもらって、単にお金をぐるぐる回してるということなんです。物々交換は不便なのでお金があって、お金がぐるぐる回ってみんなが貸し借りを相殺しているのが経済です。だから、仕事もお金も、自分のためだけでなく他者のためでもあって、お金を介して同時にそれが発生して成立しているのが世の中です。それを私自身が経験のなかで感じ、今も学生に伝えています。

経済は、みんなでみんなを支えているだけです。しかしながら、レベルはいろいろあります。例えば公害をたくさん出すのはレベルが低いですから、みんなで切磋琢磨し、どんどん良くしていくほうがいいわけですね。そういう意味で、私たちは、「推し」の会社を推していくことが大事です。「推し」というのはいろいろな要素があって、例えば「環境」とか「人権」とか「平和」とかですね。そういうものがESGと呼ばれていて、SDGsとして注目を集めます。これが、スポーツとか芸術のように切磋琢磨するようになれば、みながレベルを上げていくことができます。スポーツや芸術が美しいパフォーマンスを見せてくれるように、経営においてもそれが実現するだろうことを、まさに宮田さんたちの実践によって目の当たりにできました。勇気をいただけたと思います。そして、それを広げていかなきゃいけないとも思えました。

たくさんの作り手の方がそうして頑張っていけば、働き手は良い仕事をし、良い給料をもらって、良い処遇を得ることができる。もちろん消費者としても、そういう企業を受け入れて応援することができるようになり、好循環が起こるでしょう。そういう社会が実現することを信じて、堂目先生と10年前ぐらいからこういう活動を始めています。
私は、これが結構実現するんじゃないかと最近は思っているんです。仲間がたくさんいますから。社会のために、もちろん自分を含めた社会のために頑張っているという企業を応援する活動というのは、どんどん進めていくべきです。ぜひ皆さんも仲間になっていただいて、さらに進めていきたいと思います。
